先に正直に言います。新築でも、虫は出ます。私は長くアフターサポートの窓口をしてきましたが、お家を建てたあとのご相談で「虫」は意外と多いのです。ハチ、ダンゴムシ、ムカデ、クモ——。ただ、その中でいちばんやっかいで、いちばん知られていないのが、木を食べる「キクイムシ」です。夏はちょうど成虫が出てくる季節なので、今日はこの虫の話をきちんと書いておきます。
壁の小さな穴と、きなこのような粉
ある日ふと見ると、壁紙や棚板に直径1〜2ミリの丸い穴が開いていて、その下にきなこのような細かい木の粉が積もっている。キクイムシの合図は、だいたいこの2つです。
キクイムシは体長数ミリの茶色い小さな虫で、名前のとおり木を食べます。木の中に産みつけられた卵が幼虫になり、木の内側を食べながら育って、初夏から夏にかけて成虫になって外へ出てきます。壁の下地から出てくる場合は、壁紙を突き破って部屋に出てきます。小さな穴がいくつも並んだ様子は、正直、気持ちのいいものではありません。
ひとつ安心していただきたいのは、人には害がないことです。刺しませんし、咬みません。病気も運びません。こわいのは人ではなく、家の材料が食べられ続けることです。
食べられるのは「柱」ではありません
「木を食べる虫」と聞くと、シロアリのように家の骨組みをやられるのかと心配になりますが、キクイムシは違います。
つまり被害に遭いやすいのは、棚をつけるための下地、カーテンボックスの下地、家具といった、家のあちこちにある「合板」です。とくに輸入家具や古い家具から発生して、そこから広がるケースもあります。柱が食べられるわけではないとはいえ、毎年夏に虫が湧く家にはしたくありません。
新築のときにできる、いちばんの対策
キクイムシは出てから退治するより、入れない造りにするほうがずっと簡単です。当社では、下地に使う材料の選び方と施工のやり方を工夫して、キクイムシが発生したり壁の中に入りこんだりしにくいように工事をしています。
もし今、お住まいの家で穴と粉を見つけたら。まず、掃除機で粉を吸って、穴の場所に印をつけておいてください(マスキングテープで十分です)。また粉が落ちてくるようなら、その中でまだ食べている証拠です。市販の殺虫剤を穴に注入する方法もありますが、発生源が壁の中や家具の裏だと届きません。建てた会社に写真を送って相談するのが、いちばん早くて確実です。
畳から出てきたら、それは別の虫です
キクイムシとよく間違えられるのが、シバンムシという虫です。見た目は同じような小さい茶色の虫ですが、食べるものが違います。シバンムシは畳のい草や、乾麺・小麦粉・お菓子などの乾物が好物です。
畳の部屋で小さな虫を見かけるようになったら、まず疑うのはこちらです。対処も変わります。畳なら干して乾かす・風を通す、台所なら粉ものや乾物を密閉容器に移す。それでも続くようなら、畳の下で発生していることがあるので、これも建てた会社かお近くの畳屋さんに相談してください。
どちらの虫か分からないときは、「どこで見かけるか」で考えると分かりやすいです。棚や壁ぎわで粉と一緒なら木を食べるキクイムシ、畳や台所まわりならシバンムシ。ここまで見分けられれば、対処はもう半分終わっています。
よくあるご質問
キクイムシは放っておくと家じゅうに広がりますか?
すぐに家じゅうがやられる、ということはありません。ただ、成虫が出た木の近くにまた卵を産むので、放っておくと同じ場所で毎年繰り返すことがあります。「去年も同じあたりに穴が開いた」という状態になる前に、発生源の板ごと交換してしまうのが確実です。
虫が苦手です。設計の段階でできることはありますか?
あります。網戸や玄関の造りで入り口を減らす、外に置く物入れと家の間を離す、湿気のたまる場所をつくらない——虫の入りにくさ・住みにくさは、間取りと外構でかなり変わります。お打ち合わせのときに「虫が本当に苦手で」と言っていただければ、その前提で考えます。実は、そう言われるお客様は少なくありません。
シロアリとは違うのですか?
違います。シロアリは土の中から入って構造材を食べる虫で、対策も点検の仕方も別です。当社の家は防蟻処理をしたうえで、定期点検のときに床下も確認します。キクイムシは「上まわりの合板」、シロアリは「下まわりの構造」と、見る場所が分かれるとお考えください。
